仕事を続ける上で大事なことの一つに、気持ちを安定させることがあります。
気持ちを上手にコントロールできればよいのですが、双極性障害の方は気持ちの振れ幅がとても大きく、自身でコントロールしにくいため、仕事を続けるのが難しくなりがちです。
双極性障害で退職された方が就職・再就職を目指す場合、 「就労移行支援」の利用を考えてみてはいかがでしょうか。
双極性障害の方にとっての「就労移行支援」
気持ちは揺れ動くものですが、社会人であれば、高ぶりや落ち込みを一定範囲に収めることが求められます。
しかし、振れ幅がとても大きく、脳に機能障害が起きているほどになると、医師に双極性障害と診断されることがあります。
双極性障害は、以前は躁(そう)うつ病とも言われましたが、躁とうつの2つの状態を繰り返す障害です。
躁病でもうつ病でもなく、気持ちの振れ幅が大きいことが特徴で、躁病やうつ病とは違う病気とされ治療薬なども異なります。
はっきりした「躁」状態がある場合は双極Ⅰ型障害、「軽躁」状態とうつ状態を繰り返す場合は、双極Ⅱ型障害と呼ばれますが、いずれにせよ、安定的な就労は難しくなります。
双極性障害の方が、就職・再就職を目指す場合、就職準備は治療・療養しながらとなりますし、就職活動の中で障害がマイナス要因になる不安もありますので、一人で就職活動を続けるのはとても大変です。
「就労移行支援」を利用することで、そのような不安を解消しながら就職・転職活動を進めていくことができます。
不安な就活には寄り添ってくれるサービスがあると気持ちがラクになりますね。
双極性障害の方への就労移行支援とは?
「就労移行支援」とは、「障害者総合支援法」で定められた福祉サービスの一つで、65歳未満の障害者が対象です。
ここでいう障害者とは、障害者手帳を持っているさまざまな障害の方を指し、双極性障害の方も含まれます。
障害者手帳がなくても、医師の診断書等で代用できる場合もあります
就労支援を具体的に行う「就労移行支援事業所」は、ハローワークなどが提供する職業トレーニング施設とは違い、障害者の自立を支援する福祉施設の一つという位置付けです。
そのため、就労移行支援事業所では、利用者の生活面にも気を配り、人によっては生活リズムを整える段階から始まり、職業訓練でその人の力を伸ばす段階を経て、最終的に就職して自立するまでを、最長2年の間支援します。
就労移行支援は、双極性障害の方が、治療・療養しながら、就職準備できるサービスと言えるでしょう。
双極性障害の方への就労移行支援の内容
双極性障害の方が、就労移行支援サービスを受けるために就労移行支援事業所に入ると、具体的にどのような支援を受けられるのでしょうか?
就労移行支援の内容は、就労移行支援事業所によって様々ですが、福祉サービスの指針に沿って、次のようなステップを踏むことは共通です。
生活面の支援
就労移行支援事業所に入ると、まず、就労を含め、今後の生活をどうしていきたいかを聞かれ、個別の支援計画が立てられます。
あなたが双極性障害であれば、その症状を考慮した計画となります。
スキル習得支援
今後の方針の大枠が定まったら、具体的な支援が始まりますが、就職に必要なスキルのトレーニングはその代表的なものです。
トレーニングの細かい内容は、就労移行支援事業所によって違いますが、おおむね、次のようなステップがあります。
- 基礎トレーニング:ビジネスマナーやコミュニケーションスキルなどの習得
- 応用トレーニング:パソコン作業や軽作業などに必要なスキルの習得
- 実践トレーニング:実務を想定してのロールプレイや企業訪問などを通じた、実践的スキルの習得
就労移行支援事業所では、双極性障害の方が、治療・療養しながら、こうしたトレーングを受けることができます。
就職活動支援
応募書類作成や面接対策のアドバイスのみならず、職場選定サポートや企業面接の同行サポートなどもしてくれます。
双極性障害の方が、一人で悩まなくてもよいですね!
就職後の支援
就職できたとしても、いざ働き始めると、躁の状態であれば、仕事のやり方や人間関係などでトラブルが起きるかもしれませんし、うつの状態であれば、コミュニケーションが難しくなり、言いたいことが言えなかったりするかもしれません。
そうした事態に備えて、就労移行支援事業所のスタッフが、定期的に職場に訪問し、相談を受け、悩みごとの解決を図ってくれます。
ストレスを軽減してくれるので、安心ですね!
双極性障害の方に向いた就労移行支援事業所は?
就労移行支援は、福祉サービスということもあり、職業訓練のみに特化せず、利用者の生活面にも気を配りながら、最長2年の間支援します。
療養しながら就職準備できるので、双極性障害の方に向いているサービスといえます。
とはいえ、就労移行支援サービスはあらゆる障害の方を対象としており、就労移行支援事業所によって、どんな障害の方がどれくらい利用されているかは違うため、すべての事業所が双極性障害について精通しているとは限りません。
双極性障害の方は気持ちの波が大きく、事業所内でもコミュニケーションが難しくなってしまうかもしれませんので、ご自身の障害特性が理解されるかどうか確認が必要でしょう。
また、双極性障害の方は、時にエネルギッシュで、仕事でよい成果を出した経験を持つ場合もあり、より高度なトレーニングを望む方もいらっしゃるでしょう。
双極性障害の方は、双極性障害について精通し、ご自分の今後のキャリアに役立つ職業トレーニングを提供できる、就労移行支援事業所を探すのがよいでしょう。
まとめ
就労移行支援は、福祉的配慮を受けながら職業トレーニングができるため、就職・再就職を目指す双極性障害の方におすすめです。
ただ、就労移行支援事業所は数多く、共通の指針はあるものの、各事業所によって具体的なトレーニング内容は違いますので、事業所選びが大切になります。
以前は、あらゆる障害やキャリアの方を対象に、一律のトレーニングを課す事業所が多かったかもしれませんが、最近は、各障害に特化し、心理面の支援や、職業経験豊富な方へのより高度なトレーニング(高度なIT技術など)を提供する事業所も増えています。
初めて就労を目指す双極性障害の方にとっても、職業経験豊富な双極性障害の方にとっても、就労移行支援事業所の選択肢は広がっています。