『障害者総合支援法』が制定されて以来、企業の障害者雇用枠は広がり、障がい者の就労を支援する施設も急増しています。
とはいえ、設置主体は多岐にわたり名称も様々で、どの施設にどんな特徴があるのか分からない方も多いのではないでしょうか?
ここでは就労を考えている障がいを持つ方のための「就労移行支援」と「障害者職業センター」の違いなどを確認したいと思います。
障害者職業センターとは?
障害者職業センターは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営しています。

この独立行政法人は、前身となる組織が1961年設立です。半世紀以上前から障害者雇用をサポートしている訳ですね。
障害者職業センターは、総合センター・広域センター・地域センターとありますが、これから就労を考える障がい者がアクセスしやすく、利用者も多いのが、「地域障害者職業センター」です。
地域障害者職業センターは、全国47都道府県に原則1ヶ所ずつあります。(東京都など2ヶ所の所もあります)
各都道府県に1ヶ所なので誰もが行きやすいとは言えませんが、居住地による利用制限はないため、自分の住んでいる都道府県の外にある地域障害者職業センターに行ってもOKです。



例えば、県境に住んでいて、隣県のセンターの方が行きやすければ、そちらに行ってもかまいません。
障害者対象とはいえ福祉的サービスではなく、あくまで就業のためサービスだと言えます。
「職業リハビリテーション」という言葉は、ここで行うサービスは「職業準備支援」であり、「職業訓練(IT技術の講習など)」ではないことを言っています。
ハローワークと同様、公的サービスであり、利用料は無料です。利用に際して、障害者手帳は必要ありません。



障害者職業センターでは障がい特性に対する対処などを教えてもらえます。
障害者職業センターの利用方法
初回面談を電話等で予約し、まず職業相談・評価を行います。
支援方針が定まったら、職業準備支援カリキュラムに進みます。
カリキュラムは、障害特性に合わせていくつも設定されており、障がい者の状況や課題によって1~3カ月程度の中で行います。
通う頻度は、集中して通う人は、9:00~15:00位、平日の週5日通います。
ハローワークと連携して就職活動し、就職できた後も、ジョブコーチ(職場適応援助者)のフォローを受けられます。
人によって様々なケースがあるのですが、概略はこのような形になります。
就労移行支援とは?
就労移行支援とは、「障害者総合支援法」に基づく、障害者の就労を支援するサービスで、一般就労等を希望する65歳未満の障害者が対象です。



2006年に始まったので、比較的新しいサービスですね。
就労移行支援のサービスは、具体的には、民間企業・NPO法人・社会福祉法人などが運営する、就労移行支援事業所で行われ、その利用に際しては、概ね次のような手順を踏みます。
就労移行支援事業所は、各地に多数あるので、まず、行きたい事業所に利用の相談をし、利用したい事業所が決まれば、市区町村の窓口で福祉サービスの利用を申請をします。
この際、原則、障害者手帳が必要ですが、医師の診断書などがあればよい場合もあります。
利用料金は前年度の所得に応じて自己負担額が変わりますが、ほとんどの場合は無料もしくは低額で済みます。
事業所の利用が始まると、面談などを通じて個別支援計画が立てられ、それに沿って作業や実習が始まります。
その内容は様々で、「毎日休まず通う」ことを目指す段階から、「IT技術を身に付ける」といった職業訓練まで多岐にわたります。
個別の訓練プログラムが一通り終わると、利用者の就職活動をサポートします。
具体的には、利用者と一緒に求人を探したり、面接や履歴書の書き方について助言したりします。



就労移行支援では、しっかり通う人は9:00~15:00位・平日週5日のペースで最長2年間、こうした内容のサービスを受けられます。
就職できたらそこでサービス終了ではなく、就職後も職場定着のためのサポートが受けられます。
就労移行支援と障害者職業センターの違い
就労移行支援と障害者職業センターの特徴をそれぞれ見てみましたが、違いは分かりましたでしょうか?



どっちも変わらないような気がしないでもない・・・
両者とも、障がい者の就労を支援するという目的で、並立してサービスを行っていますので比べれば異なる部分はあります。その中で一番違うのはコンセプト的な所です。
障害者職業センターは、「障害者の雇用を促進する」法律に基づいており、あくまで「雇用」や「労働」のためにあります。
ハローワークの延長のようなもので、短期間で集中的にカリキュラムをこなして、その人が今持っている力で就職することを目指します。
就労移行支援は、「障害者の自立を支援する」法律に基づく福祉サービスの一つです。
生活面にも配慮し、人によっては生活リズムを整える段階から始まり、職業訓練でその人の力を伸ばす段階を経て、最終的に就職して自立するまでを、最長2年の間に目指します。
まとめ
就労移行支援と障害者職業センターは、障がい者の就労を支援するという目的は同じですが支援の仕方は違うと言えます。
就労の意思が明確で、今持っている力で早期に就職を目指す人は、障害者職業センターがおすすめです。
対して、体調を整えながら、徐々に自分の力を伸ばして、時間をかけて就職を目指したい人には、就労移行支援事業所がおすすめです。
ただ、どちらか一つしか選べないという訳ではありません。
例えば、障害者職業センターで良い支援を受けたものの、すぐの就職は難しかったため、就労移行支援事業所に属しながら、じっくり就職を目指すことにしたという人もいるようですね。